旧暦の11月は「霜月」といい、現在の12月にあたります。
霜が降りるこの時期は、日々 冷え込みが厳しくなり、冬の到来を実感しますね。
今回は、旧暦11月の二十四節気と七十二候および雑節について、ご紹介いたします。
私たちは現在、新暦にて暮らしておりますが、「旧暦」を意識してみますと、豊かな季節感を味わうことが出来るかと思います。
※ 掲載の画像はイメージです
- 旧暦11月_仲冬(ちゅうとう)
- 旧暦11月の二十四節気と七十二候
- 旧暦11月の二十四節気と七十二候および雑節
- ◎二十四節気「大雪」たいせつ―新暦12月7日頃
- ◇七十二候 第六十一候「閉塞成冬」そらさむくふゆとなる―新暦12月7日~11日頃
- ◇七十二候 第六十二候「熊蟄穴」くまあなにこもる―新暦12月12日~16日頃
- ◇七十二候 第六十三候「鮭魚群」さけのうおむらがる―新暦12月17日~21日頃
- ◎二十四節気「冬至」とうじ―新暦12月22日頃
- ◇七十二候 第六十四候「乃東生」なつかれくさしょうず―新暦12月22日~26日頃
- ◇七十二候 第六十五候「麋角解」さわしかのつのおつる―新暦12月27日~31日頃
- ◇七十二候 第六十六候「雪下出麦」ゆきわたりてむぎのびる―新暦1月1日~4日頃
- まとめ
旧暦11月_仲冬(ちゅうとう)
旧暦11月の異名を、幾つかご紹介いたします。
霜降月(しもふりづき)
12月になりますと、冷え込みが厳しくなり、霜が降ります。
私たちがよく耳にする「霜月」は、霜降月が縮まったものからきていると言われています。
露隠葉月(つゆこもりのはづき)
葉の上によく見られた露が、隠れてしまう月。
露隠葉月は、露が霜に変わるという意味があります。
雪見月・雪待月
旧暦11月の異名に「雪」が用いられるのは、雪は豊作のしるしであったからなのだそうです。
先人は、雪が降るのを心待ちにし、雪見の宴も催されていたと言われています。
旧暦11月の二十四節気と七十二候
旧暦11月の二十四節気と七十二候、この季節に見られる動植物について、ご案内いたします。
※ 二十四節気と七十二候は 時系列にてご紹介いたしますので、混合しております。
旧暦11月の二十四節気と七十二候および雑節
下記のカレンダーは、新暦12月です。
◎二十四節気、[ 〇〇候]七十二候
◎二十四節気「大雪」たいせつ―新暦12月7日頃
大雪。
この時期から日に日に寒さが増してゆきます。
山では、熊や鹿が冬眠をはじめ、海で育った鮭が、生まれた川に戻ってくる時期でもあります。
◇七十二候 第六十一候「閉塞成冬」そらさむくふゆとなる―新暦12月7日~11日頃
重い冬の雲が空を覆う頃です。
枯尾花_かれおばな
蒲の花穂は、動物の尻尾に見立てられ「雄花」と呼ばれ、冬になって枯れた穂を「枯尾花」といいました。
秋の七草にも数えられ、お月見に使われていた薄などの萱(ススキ、チガヤ等の総称)は、葉の切れ味が鋭いため、魔よけの力を持っていると信じられていたようです。
歳暮_せいぼ
歳暮は、文字のとおり「年の暮れ」という意味で、この時期に、一年の感謝の品を贈ることを「歳暮の礼」「歳暮祝」といいました。
現在は これが略されて、「お歳暮」になっていますが、本来は年末に先祖を祀るためのお供えを贈り合う習慣だったそうです。
◇七十二候 第六十二候「熊蟄穴」くまあなにこもる―新暦12月12日~16日頃
熊が冬眠に入る時期です。
南天_なんてん
南天は、「難を転じる」という語呂合わせから、縁起が良い植物とされてきました。
南天の実は、咳止めの薬効があることが知られており、葉は防虫、腐敗防止の作用がありますので、先人は米びつや鎧びつに入れていたと言われています。
◇七十二候 第六十三候「鮭魚群」さけのうおむらがる―新暦12月17日~21日頃
鮭が群れをなして、川を上る時期です。
鮭_さけ
鮭は、川の上流で生まれ、雪解け水と一緒に川を下り、沖に出て、生涯の大半を海で過ごすのだそうです。
そして、数年後の秋から冬にかけて、産卵のために 大きな群れをなして、自分が生まれた川に戻ってきます。
そのため、「鮭魚群」は、鮭ではなく 他の魚を指しているという説もあるそうです。
さて、鮭はさまざまは異名が付いていますので、幾つかご紹介いたします。
🐟 秋味 | 鮭は秋の味を代表する魚という意味で、このような呼び方をします。 |
🐟 時不知 | 4月~7月頃に獲れる鮭の呼び方です。 |
🐟 鼻曲がり | 生殖器の雄は、いかつい顔になると言われています。 |
蝦蛄葉仙人掌_しゃこばさぼてん
蝦蛄葉仙人掌は、クリスマスの時期に花が咲くので、英名では「クリスマス・カクタス」と呼ばれ、カクタスは仙人掌を意味します。
シャコバサボテンの、蝦蛄のような形をした葉のように見える部分は 実は「茎」です。
年忘れ
現在は、「忘年会」という呼び方が一般的になりましたが、一年の苦労を忘れるための宴を催すことを、「年忘れ」と称し、中世から行われていたという説があります。
◎二十四節気「冬至」とうじ―新暦12月22日頃
冬至は、一年で 太陽の高さが最も低くなり、昼の時間が最も短くなる日です。
この日を境に、日が少しずつのびてゆきますが、寒さはいよいよ厳しさを増してゆきます。
諺の、「冬至、冬中、冬はじめ」は、暦の上では冬の真ん中ではあるものの、本格的な寒さはこれから始るという意味です。
◇七十二候 第六十四候「乃東生」なつかれくさしょうず―新暦12月22日~26日頃
冬至芽_とうじめ
乃東生は、靭草が生える頃という意味です。
靭草は、夏至の初候の頃に枯れ、冬至の頃に芽を出しますので、まさに一年の節目を表すような植物ですね。
なお、菊の親株も地下茎から小さな芽が出てくるのがこの時期で、これらを総称して「冬至芽」といいます。
柚子湯_ゆずゆ
柚子湯は、ひびやあかぎれを治し、血行をよくして風邪の予防になると言われています。
南瓜_かぼちゃ
貯蔵がきくカボチャは、野菜が乏しくなるこの時期の貴重なビタミン源として重宝されていました。
◇七十二候 第六十五候「麋角解」さわしかのつのおつる―新暦12月27日~31日頃
氈鹿_かもしか
私たちは、冬の鹿といえば日本カモシカを連想しますが、七十二候「麋角解」の麋は、日本には分布しない大鹿のことを指しているという説があります。
日本カモシカは ウシ科ですので角を落とさないそうですが、その毛で氈(毛織の敷き物)を作ったことから氈鹿という名前が付いたと言われています。
篝火花_かがりびばな
シクラメンは春の季語ですが、花が咲く期間が長いので重宝され、冬に出荷されることが多くなってきました。
炎が燃え立つような花びらの形をしていることから「篝火花」という異名をもっているシクラメン。
あなたの心に、あたたかい灯をともしてくれますように。
蕎麦_そば
その昔、尖ったところや、ものの角のことは、「稜(そば)」と呼ばれており、実が三角に尖っている蕎麦の語源はここからきていると言われています。
昔、蕎麦は 米に混ぜたり、粉にしてお湯で練って食べられていたと言われており、現在のように細い麺にして食べるかたちが広まったのは、江戸時代になってからなのだそうです。
年越し蕎麦の由来は 諸説ありますが、「細く長く」にあやかり、食すると運が向くとも考えられて「運気蕎麦」とも呼ばれていたようです。
除夜の鐘_じょやのかね
大晦日の夜から新年にかけて撞く「除夜の鐘」は、百八つあるといわれる人の煩悩を消すといわれています。
今年起きた困難を浄めてほしいと願うのは、人間の煩悩なのかもしれませんね。
◇七十二候 第六十六候「雪下出麦」ゆきわたりてむぎのびる―新暦1月1日~4日頃
年越草_としごえぐさ・としこしぐさ
七十二候「雪下出麦」は、新暦では新年と重なりますので 違和感を覚えられるかもしれませんが、旧暦と新暦は一月ほどズレがあります。
麦は、別名「年越草(としごえぐさ・としこしぐさ)とも呼ばれており、「雪下出麦」は、雪の下で芽をのばす麦に思いをはせています。
秋に種をまく麦は、晩秋に発芽して越冬し、次の年になって実を結ぶ越年草で、小満のころ、実りのときを迎えます。
※ 小満・・・二十四節気 第八候。新暦5月20日頃
富正月_とみしょうがつ
元旦、正月三が日の間に降る雨や雪を、「御降り」「富正月」といいます。
御降り | 天から離れてさがってきたものという意味 |
富正月 | 正月三が日の雨や雪は、豊作のしるし |
昔は、正月に限らず、雪の多い年は豊作になるとされ、「雪は五穀の精」と言われていたのだそうです。
福寿草_ふくじゅそう
旧暦の元旦頃に咲く福寿草は、「元旦草」とも呼ばれ、お正月飾りに用いられてきました。
名前の由来は、幸福と長寿の願いを込めて名付けられたと言われており、黄金色の花を「福」、花期が長いことを「長寿」になぞらえたという説もあるそうです。
なお現在は、新暦の元旦に咲くよう、調整されている品種もあるようです。
お年玉
「年玉」は、年神様から賜ったものという意味で、お供えのお餅などを おさがりして分け合って食べ、一年の活力を頂くと考えられていたそうです。
おせち料理
お節の「節」は、季節の節目のことで、五節句の日などに神様に食べ物をお供えしたのが、おせち料理の始まりと言われています。
そして次第に、お正月の料理のみを表すようになりました。
言霊を信じていた先人は、重箱に詰められた料理に、縁起の良い 語呂合わせの食材を使っていました。
彼らは 言葉に表すことによって、現実のものになるとも考えていたようで、だからこそ、食材や料理の名前にこだわっていたと言われています。
まとめ
旧暦11月の二十四節気と七十二候について、ご紹介いたしました。
厳寒の中、辛いことがあっても、ひたすら前向きに自然と向き合い、新しい年は必ず明るくなることを信じる心は、先人も現代を生きる私たちも同じですね。
来年もよいお年になることを、お祈り申し上げます。
「関連記事」
[参考文献]
二十四節気と七十二候の季節手帖