伝承農法、サトイモとムギの混植(コンパニオンプランツ栽培)を、ご紹介いたします。
昔農家さんにとって、ムギは貴重な裏作の作物だったと言われており、ムギを寒さよけに用いてサトイモを早く植え付ける工夫をしていたのだそうです。
サトイモとムギの混植は、現在でも応用できる栽培法ですので、ご参考にしていただきましたら幸いです。
サトイモの早植えが可能になる!サトイモとムギのコンパニオンプランツ栽培
ムギの栽培について
昔農家さんにとって、ムギは晩秋から春に育てられる貴重な裏作の作物でした。
ムギは 晩秋に種をまき、5月下旬~6月上旬に収穫しますが、この後に作付けできる作物は種類が限られてくるため、昔農家さんは ムギを収穫する前に条間で春夏野菜を育てるさまざまな方法を考えていたと言われています。
江戸時代から続いている伝承農法
春夏野菜を育て始める時期は、春の嵐や遅霜など、天候が不安定であるため、昔の農家さんは、ムギを寒さよけに用いて、サトイモを早めに植え付けていたと言われています。
里芋を植ゆる畑に、前作として麦を作るなら、
麦の畝をつくるときに、里芋を植ゆることも考えるべし。
里芋の種芋を植ゆるのは、三月のことで、麦の中に穴をあけ、
種芋を一つずつ入れて土を覆う。引用「農業全書」宮崎安貞著
元禄10年(1697年)に刊行された「農業全書」には、里芋を植える畑に前作として麦を作る場合、里芋を植えることも考慮して作付けしなさい。里芋の種芋は3月に植え、麦の中穴をあけて種芋を1個ずつ入れて土で覆いなさい。と、あります。
サトイモとムギのコンパニオンプランツ栽培のポイント
1.ムギの種をまきます
ムギの種まきの適期は、一般地で10月中旬~11月下旬です。
畝の高さ10cm、条間70~80cmで、ムギの種をまきます。
なお、ムギの種は コムギ、オオムギ、エンバク、ライムギなどがあります。
2.ムギ踏みを行います
ムギが発芽し、葉が3枚以上になりましたら、麦踏みを行います。
これを行いますと、霜による根の浮き上がりを防ぐことができ、分げつ(=枝分かれのこと)もよくなります。
麦踏みは、1か月ごとに2月まで行います。
3.翌春、里芋の種芋を植え付けます
翌春、中央に植え穴を掘って、種芋を植え付けます。
この伝承農法は、通常より10~20日ほど早く、一般地では4月上旬に植えつけることが可能です。
4.ムギを刈り取ります
サトイモの芽が15cm程度まで育ちましたら、ムギを刈り取り、株元・畝全体に敷きます。
ムギの効果
ムギは根の張りが強く、根によって土が耕されます。
そして、根が枯れますと、良質の有機物をすき込んだのと同じ効果があり、ふかふかの土になると言われています。
ムギの収穫時期について
※ 出穂前に刈り取るのがポイントです
ムギは、4月下旬の出穂前に10cm程度の高さで刈り取りますと、ふたたび葉が伸びて晩夏まで地表を覆いますので、畑の保湿に役立ちます。
また、ムギにはクモやテントウムシなどの益虫がやってきます。
・オオムギ 5月下旬が収穫時期
・コムギ 6月上旬が収穫時期
まとめ
サトイモの早植えが可能になる、伝承農法、サトイモとムギの混植(コンパニオンプランツ栽培)について、ご紹介いたしました。
ムギは、昔の農家さんにとって貴重な裏作の作物でした。
今回ご紹介しました農法は、今でも応用できる栽培ですので、ご参考にしていただければ幸いです。
[参考文献]
木嶋利男著「昔農家に教わる 野菜づくりの知恵とワザ」