種を冷やして発芽を促す 伝承農法「種の冷湿処理」について、ご紹介いたします。
昔から、野菜の種を冷やしてからまきますと 一斉に発芽して、甘く元気に育つことが知られていました。
昔の農家さんが行ってきたこの方法は 今でも応用することが出来ますので、ご参考にしていただきましたら幸いです。
伝承農法|種を冷やして発芽を促す「種の冷湿処理」甘く元気な野菜が育つ昔農家の知恵
野菜の甘さは初期生育で決まります
農学者の木嶋博士は、野菜の甘さは 初期の生育で決まりますと、述べられています。
野菜も「三つ子の魂、百まで」で、初期生育の段階で身につけた性格はなかなか変わらないものです。
とくに発芽時から本葉1~3枚までの幼苗の時期は重要。
周囲の環境に合わせて、親から受け継いだ遺伝子にスイッチが入り、さまざまな能力を発揮しはじめます。
そして一度、獲得した能力は最後まで維持され、強い株づくりに役立ちます。
引用 木嶋利男著「昔農家に教わる 野菜づくりの知恵とワザ」
野菜は 能力によっては、この時期を過ぎてしまいますとスイッチが入ることなく、能力が眠ったままになりやすいのだそうです。
そこで、初期生育の段階で、隠された能力を引き出す伝承農法が、種を冷やす伝承方法「種の冷湿処理」です。
伝承農法「種を冷やす方法”種の冷湿処理”」
昔農家さんは、稲や蕎麦の種を長期間冷たい小川に浸したあとに蒔く方法を行ってきました。
木嶋博士によりますと、種を冷やす方法は、稲や蕎麦のほかに、野菜にも応用することができます。
種を冷やすともたらされる効果
💡 発芽後、双葉が甘くなり、果実も甘くなります。
💡 野菜が健康に育ちます。
💡 病害虫に強くなります。
伝承農法「種を冷やす方法」
種を冷やす期間
冷蔵庫の野菜室に約1か月 冷やします。
冷やす種について
※ ナスとトマトの種
種を冷やして蒔くことができるのは、トマト、ナス、ピーマン、シシトウ等の「ナス科」が対象です。
なお、ウリ科(キュウリ、メロン、スイカ、ゴーヤ等)は生育適温が高いので、種を冷やす場合、12℃程度で行います。野菜室は8℃前後で低すぎますので、入れないようにします。
用意するもの
・野菜の種(トマト、ナス、ピーマンなど)
・種を入れる皿
・ガーゼ、ペーパータオル
・ビニール袋
―発芽後―
・ビニールポット
・種まき用の土
種を冷やす方法
種を一晩 水に浸します
お皿などの器に種を入れて、水に浸して一晩 おきます。
冷蔵庫の”野菜室”で保存します
翌日、種を取り出し、濡らしたガーゼに包んでビニール袋に入れます。
ビニール袋に入れた種を、冷蔵庫の野菜室に入れ、1か月ほどおきます。
※ 野菜室は8℃程度で、トマトやナスの生育適期以下ですので、発芽することはありません。
ビニールポットに種をまきます
一か月経ちましたら、野菜室からビニール袋を取り出し、土を入れたビニールポットなどに種をまきます。
そして、野菜それぞれの発芽適期で管理します。
発芽した後は、よく日光に当たる場所に置き、ポットの中の土が乾いてきましたら水やりを行います。
種が発芽するまでの3つのステップ
種が発芽するまでには、3つのステップがあります。
step1. 水をたっぷりと吸います
step2. 酵素が働きデンプンを糖化します。
step3. 根や芽が大きく生長し発芽します。
種を冷やすことにより step2(第二段階)で発芽を止め、ゆっくりと種の中で酵素によるデンプンの糖化を進めます。
まとめ
種を冷やして発芽を促す 伝承農法「種の冷湿処理」について、ご紹介いたしました。
昔の農家さんが行ってきたこの方法は 今でも応用することが出来ますので、ご参考にしていただきましたら幸いです。
[参考文献]
木嶋利男著「昔農家に教わる 野菜づくりの知恵とワザ」
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