新暦6月(旧暦5月)二十四節気と七十二候および雑節

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6月は、旧暦の5月で「皐月(さつき)」といいます。

皐月は、初夏のイメージがありますが、本来は梅雨の季節で、五月雨月、早苗月と呼ぶこともあります。

私たちは現在、新暦にて暮らしておりますが、「旧暦」を意識してみますと豊かな季節感を味わうことが出来るかと思います。

今回は、6月の二十四節気と七十二候および雑節についてご紹介いたしますので、お役立ていただければ嬉しく思います。

※ 掲載の画像はイメージです

6月(旧暦5月)の二十四節気と七十二候

6月(旧暦5月)の二十四節気と七十二候および雑節、そして、この季節に見られる動植物について、ご案内いたします。

※ 二十四節気と七十二候、雑節は、時系列にてご紹介いたしますので、混合しております。

6月(旧暦5月)の二十四節気と七十二候および雑節

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◎二十四節気、[ 〇〇候]七十二候、[雑]雑節

◎二十四節気「芒種」ぼうしゅ―新暦6月5日~6日頃

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芒種(ぼうしゅ)の「芒」は、イネ科植物に特有の、細い毛のような部分のことで、この時期にムギの刈り取りや、田植えが始まります。

◇七十二候 第二十五候「蟷螂生」かまきりしょうず―新暦6月6日~10日頃

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蟷螂(カマキリ)が生まれる時期です。

拝み虫「蟷螂(かまきり)」

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鎌で獲物を狙う姿が、拝んでいるように見えることから蟷螂は「拝み虫」という異名をもっています。

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蟷螂の卵鞘は、茶色のピンポン玉ような形をしています。その中には100から300個もの卵が入っており、この時期 一斉に、成虫とおなじ形をしたミニミニサイズのこどもがたくさん生まれます。

蟷螂は、畑の野菜を食害するアブラムシやバッタ、アオムシなどを捕食する頼もしい益虫ですので、姿を見かけましたら、畑の用心棒として活躍してもらいましょう。

早苗田_さなえだ

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昔の農家さんは、二十四節気「芒種」を、田植えを始める目安にしていたと言われています。

田植えが終わったばかりの田んぼを「早苗田」、一月後の緑鮮やかな田を「青田」といいます。

田んぼひとつにしても、先人は様々な言葉で稲の生長を表していたのですね。

目高_めだか

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大きな目が高い位置にあるところから、「目高」という名が付いたと言われています。

この魚は、各地で呼び名が変わり、その数は二千を超えるのだそうです。

―目高の異名例―
こめんじゃこ、こばい、うきいお、うきんじょ、おくろばえ、きんしゃぼ、めいただき、いおご、たかもめ、ししくい、あんぶら、ざっかめ、おかめす

定家葛_ていかかずら

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定家葛ていかかずらの「定家」は、百人一首の選者でもある 藤原定家のことですが、この植物は 謡曲「定家」にちなんで命名されたと言われています。

藤原定家は、後白河法皇の皇女、式子内親王と身分の違いの恋に落ち、内親王が若くして亡くなった後、定家の執念が葛と化し、内親王の墓に絡まり付いていたと伝えられています。

枇杷_びわ

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枇杷は、楽器の琵琶に姿かたちが似ていることから、「びわ」と呼ばれるようになったのだそうです。

枇杷の花の開花は初冬で、あまり目立つことはありませんが、梅雨のこの時期に美しい橙色の実が濃い緑の葉から顔をのぞかせます。

なお、葉で作る枇杷茶は、暑気払いに重宝されていたそうです。

枇杷茶の作り方 ➡ 本ページ最後[関連記事]を参考になさってください。

雑節「入梅」にゅうばい―新暦6月10日頃

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梅雨の季節に入る最初の日です。

旧暦の暦には、二十四節気と七十二候を補足する「雑節(ざっせつ)」にも記されており、梅雨入りの目安とされていました。

◇七十二候 第二十六候「腐草為蛍」くされたるくさほたるとなる―新暦6月11日~15日頃

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蛍が光り出す時期です。

朽草_くちくさ

朽草(くちくさ)は、蛍の異名です。

土の中でサナギになる蛍は、羽化して枯れ草の下から出てきます。

昔の人は、その姿を見て、朽ちた草が蛍になったと考えていたのだそうです。

桜坊_さくらんぼ

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「桜の坊や」と呼びたくなるような愛らしいサクランボは、この時期から赤く色付き始めます。

ソメイヨシノや山桜などにも実がなりますが、小さくて、食べても美味しくありません。

私たちが食している桜坊は、西洋実桜という品種の桜の実です。

四葩_よひら

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先人は、四枚の花びらを持つ紫陽花を、四葩(よひら)と呼んでいたのだそうです。

四葩の「葩」は、花のことですが、ここでは花びらという意味で使われています。

また紫陽花は、花の色が変わるため、「七変化」「八仙花」と、呼ぶこともあります。

ちなみに「紫陽花」という表記は、白居易はくきょいの詩に出てくる紫陽花をこの花と勘違いして付けられ、実際の漢名の紫陽花とは別の花なのだそうです。

蝸牛_かたつむり

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デンデンムシ、マイマイなど、多くの異名をもつ蝸牛は、古くはナメクジと区別されず、ナメクジを「裸蛞蝓(はだかなめくじ)」などと呼んでいたのだそうです。

◇七十二候 第二十七候「梅子黄」うめのみきばむ―新暦6月16日~21日頃

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梅の実が黄色く色付きはじめる頃です。

青梅

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熟す前の青い梅の実を、青梅と呼びます。

生の青い梅には、アミグダリンという有毒な成分が含まれていますので、梅干しや梅酒などに加工して利用します。

昔から、梅を塩に漬けた時にできる梅酢は、調味料として利用されており、梅干しの歴史は大変古く、平安時代にはすでに食べられていたという記録があるのだそうです。

先人の、底知れぬ知恵に 脱帽ですね。

なお、物事の具合を表す「塩梅(あんばい)」は、もとは塩と梅酢で味加減を整えたことに由来すると言われています。

梅雨明り_つゆあかり

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梅雨(ばいう)は、もともとカビを生じさせる長雨という意味で、「黴雨(ばいう)」と書いていたのだそうですが、音がおなじということで「梅」に置き換えられたという説があります。

この時期は、昼間でも薄暗い日がつづき、気持ちもジメジメしがちですが、夕方になると雨が小止みになり、うっすらと陽が差し込むことがあります。

これを、「梅雨明り」といいます。

蚊喰鳥_かくいどり

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哺乳類である蝙蝠(こうもり)は、昔は鳥と思われていました。

西洋では悪魔のイメージがある蝙蝠ですが、昔の日本人にとっては、蚊をたくさん食べてくれる益鳥だったのだそうです。

蝙蝠の語源は、川辺の洞窟や橋の下にぶら下がっている様子から、川を守る番人に見立て、「川守(かわもり)」と言われています。

◎二十四節気「夏至」げし―新暦6月21日頃

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一年でいちばん昼が長い日「夏至」は、もっとも太陽の位置が高くなり、影が短くなる日でもあります。

しかし実際は、梅雨の最中で、太陽の姿が見えないことが多いですね。

◇七十二候 第二十八候「乃東枯」なつかれくさかるる―新暦6月22日~26日頃

靭草(うつぼぐさ)が枯れる時期です。

靭草_うつぼぐさ

natsukarekuksa,utsubogusa,kakoso (🌙)

乃東枯の「乃東(だいとう)」は、夏枯草(なつかれくさ・かこそう)のことだと言われています。

この時期、親指ほどの花穂に、紫色の花を次々と咲かせる夏枯草は、花が終わると枯れたような花穂が残るため、夏枯草と呼ばれるようになったのだそうです。

 

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雨降花_あめふりばな

hirugao (🌙)昼顔

taniutsugi (🌙)谷空木
(たにうつぎ)

hotarubukuro (🌙)蛍袋
(ほたるぶくろ)

mukuge🌙木槿
(むくげ)

rindo (🌙)竜胆
(りんどう)

pansy,sumire (🌙)
(すみれ)

この時期に咲く花を、雨降花(あめふりばな)といいます。

先にご紹介した靭草をはじめ、昼顔、谷空木(たにうつぎ)、蛍袋(ほたるぶくろ)、木槿(むくげ)、竜胆(りんどう)、菫(すみれ)など、梅雨の時期ならではの雨降花をお楽しみになってください。

短夜_みじかよ

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秋の夜長(よなが)に対し、夏は「短夜(みじかよ)」と呼ばれます。

夏至は一年でもっとも夜が短い日で、冬至と比べますと約5時間も違うのだそうです。

江戸時代までは、「不定時法」という、夜明けから日没までの時間をそれぞれ六等分した時間の単位で暮らしており、一単位を「一刻(いっこく)」と、呼んでいました。

同じ一刻でも、冬と夏、夜と昼の長さは一定ではなかったようです。

私たちが、夏より 冬の暗い朝に起きるのがツライと思うのは、理にかなっているのかもしれませんね。

鯵_あじ

aji (🌙)

味が良いので「あじ」と呼ばれるようになった「鯵」は、この頃から旬になり美味しくなってきます。

昔は、魚といえば鯵という地域が多かったそうですが、それほど日本人にとってなじみ深い魚です。

◇七十二候 第二十九候「菖蒲華」あやめはなさく―新暦6月27日~7月1日頃

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日本に古くから自生していた菖蒲は サトイモ科の植物で「しょうぶ」「あやめ」と呼ばれ、端午の節句に用いられていました。

その花は薄い黄色のガマの穂のような形をしたもので、観賞用にはされません。

なお、あやめ・花菖蒲、かきつばたはアヤメ科で、菖蒲とは別の植物です。

名前 読み方 特徴 見分け方の一例
古来の菖蒲 しょうぶ サトイモ科。しょうぶ・あやめと呼ばれていた。
端午の節句に使われる。
ガマの穂のような薄い黄色い花が咲く
菖蒲 あやめ アヤメ科。菖蒲の葉に似た花で、江戸時代中頃に菖蒲(あやめ)と呼ばれるようになる。 花の付け根が網目模様になっている
杜若 かきつばた アヤメ科。江戸時代前半には多くの品種があったが、花菖蒲の発展であまり注目されなかった。現代では品種改良が進められている。 花の付け根が白い
花菖蒲 はなしょうぶ アヤメ科。江戸時代中頃に生み出された植物で、あやめとは別物 花の付け根が黄色

※諸説あるうちの一例です

梔子_くちなし

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雨が降り続くこの時期に、甘い香りを放ちながら咲く純白の花 梔子(くちなし)。

その語源は、実が熟しても割れない「口無し」からきていると言われています。

無害無毒の梔子の実は染料になり、染め出される色は、赤みを帯びた黄色で、今でもお料理の色付けに利用されています。

梔子色_くちなしいろ

梔子の実で染めた鮮やかな黄色を、「梔子色」といいます。

昔は、サツマイモの甘煮、栗きんとん、たくあん、和菓子などの着色に広く使われていたのだそうです。

染め出しの方法は意外に簡単で、梔子の実をペンチなどで割り、出汁の袋などに入れて煮出しますと、染料液になります。

七十二候 第三十候「半夏生」はんげしょうず―新暦7月2日~7月6日頃

半夏雨_はんげあめ

 

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半夏は、サトイモ科の烏柄杓(からすびしゃく)のことで、緑色の仏炎苞(ぶつえんほう=肉穂花序を包む大きな苞のこと)に包まれた細長い袋のような花です。

ご覧のとおり、独特なかたちをカラスの柄杓に見立てて、この名が付きました。

なお烏柄杓は、毒をもっているそうですが、古くは薬草として珍重されていたと言われています。

その半夏が生えるこの時期にあたる「半夏生」は、七十二候とは別に雑節としても特別に暦に記されていました。

半夏生は、田植えを終える目安や、この日の天候で収穫を占ったりもしていたそうです。

半夏生の風習

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関西地方では、半夏生にタコを食べる風習があるのだそうです。

これは、農作物が蛸の足のように、しっかり大地に根付くようにという願いが込められているのだそうです。

そのほかにも、サバやお餅を食べるなど、地域によって変わりますが、この時期に昔の農家さんは 田植えの労をねぎらい、体調を整えていたと言われています。

半化粧_はんげしょう

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塗りかけの白粉(おしろい)のように、半分お化粧をしたように見えるところから付いたと言われている半化粧(はんげしょう)は、「半夏生」とも書きます。

烏柄杓(からすびしゃく)と同じように、この植物も 雑節の半夏生の頃に花が咲くことから、この名が付いたという説があります。

半化粧の花が咲く時期は、ちょうど一年の半ばにあたりますので、残りの化粧ができるよう、充実させた半年を送りたいという気持ちが湧いてきそうですね。

心太_ところてん

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海藻の天草からつくる心太(ところてん)は、日本独特の食べ物で、平安時代にはすでにあったと言われており、当時は「心太(こころぶと)」と呼ばれていました。

「心」は、凝り固まるという意味の「凝(こごる)」が変化したもので、「心太」を「心天」と書き誤り、それが「ところてん」になったとも言われています。

心を太くすると書く「ところてん」で、暑い夏を乗り切りたいですね。

鵜_う

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魚をかまずに丸のみにする鵜の習性を利用したのが、「鵜飼(うかい)」です。

鵜飼の歴史はとても古く、古事記などにも記録が残っているのだそうです。

「人の話を鵜のみにする」は、鵜の習性からきたものだとわかりますね。

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まとめ

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6月(旧暦5月)の二十四節気と七十二候を ご案内いたしました。

私たちは現在、新暦にて暮らしておりますが、旧暦を意識してみますと豊かな季節感を味わうことが出来るかと思います。

あなたがお住いの地域の動植物を観察してみてくださいね。

[参考文献]

・二十四節気と七十二候の季節手帖

・新版 暦に学ぶ野菜づくりの知恵 畑仕事の十二ヵ月

[参考サイト]

一刻の長さが変わる江戸時代の時間

知識の宝庫!目がテン!ライブラリー「対決 アヤメとショウブ」

 

この記事を書いた人
ベジルナ

関東在住の主婦です。
江戸時代から伝わる農薬や化学肥料を使わない野菜の栽培法、旧暦、自然暦、季節の作物を使ったレシピ、おすすめしたい書籍などをご紹介しております。

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