NHKの朝ドラ「らんまん」の主人公、牧野富太郎の植物図鑑について、ご紹介いたします。
牧野氏の植物に対する情熱が、この一冊に集約されているといっても過言ではないほど、見応えのある図鑑です。
牧野富太郎の植物図鑑について
牧野 新日本植物図鑑は、昭和36年6月30日に初版が発行されました。
今回ご紹介する図鑑は、昭和47年7月に発行された二十二版で 価格は5,500円です。
余談ですが、現在の物価は 昭和47年の約3倍ですので、牧野 新日本植物図鑑は16,500円に相当します。
※ 昭和47年の1万円は約3万円に相当する計算になります(消費者物価指数 102.7(令和4年)÷34.6(昭和47年)=約3倍)
[参考サイト]日本銀行サイト「教えて!にちぎん」
「牧野 新日本植物図鑑」について
約4,000種類の手描きの植物が掲載
牧野 新日本植物図鑑は、4,000種近くの植物が掲載されている大変ボリュームがある図鑑です。
1頁に4種類の植物が記載されており、そのページたるや 974ページ、植物の用語図解が10ページにもわたります。
そして 驚くべきことに、図鑑に掲載されている全ての植物が 牧野氏の手描きによるものです。
美しい挿し絵付き
植物図鑑の表紙を開くと、在りし日の牧野氏の白黒写真、やまもも、いそぎく、しろばなまんじゅしゃげ、じゃがたらすいせんの挿絵があります。
「観る・見る・読む」を楽しめる植物図鑑
牧野 新日本植物図鑑は、約4000種類の植物が掲載されており、牧野氏の挿絵を一つ一つ楽しむことができます。
内容は、各植物の属性、原産地、日本への輸入時期のほかに、植物名の由来、姿かたちの表記が実に詳細に書かれています。
牧野氏の手描きによる挿絵は、植物によっては 種や実の絵が 一緒に描かれており、それが何とも愛らしく、ほのぼのした気持ちになります。
牧野氏にちなんだ植物の記載もあり
牧野氏が、日本において初めて学名を発表した「やまとぐさ」、たぬきの尾に見立てて名付けたとされる「むじなも」なども掲載されています。
外国産の植物も掲載
牧野 新日本植物図鑑は、日本生まれの植物だけでなく、輸入された植物も数多く載っています。
「牧野 新日本植物図鑑」の使い方・見方
エングラー体系に基づく図鑑
牧野 新植物図鑑は、エングラー体系に基づいて分類されています。
エングラー体系とは、ドイツの植物学者である アドルフ・エングラーが1892年に発表した植物の分類体系です。
エングラーが発表した「植物分科提要」は、ドイツの植物学者であるアウグスト・アイヒラーが1883年に発表した「薬用植物学講義提要」を引き継いでいます。
エングラー体系は、次の要素が盛り込まれています。
・植物を隠花植物と顕花植物に分ける。 ・顕花植物を裸子植物と被子植物に分ける。 ・被子植物を単子葉植物と双子葉植物に分ける。 ・双子葉植物を離弁花類と合弁花類にわける。 [参考サイト]Wikipedia「新エングラー体系」
牧野 新植物図鑑の使い方・見方
私が行っている 牧野 新植物図鑑の使い方をご紹介いたします。
図鑑の後ろにある「日本名索引」を引いて、掲載ページを開きます。
日本名索引は、ほとんどが和名で書かれていますが、チューリップ、ポインセチアなどのように外国名が載っている植物もあります。
なお この図鑑は、植物の名を知っていることが前提で、名がわかりませんと、調べたい植物のページにたどり着くのは難しいかもしれません。
つまり、国語辞典や英和辞典のように、単語やスペルを分かったうえで調べるのと同じであると、お考えいただければと思います。
※1 ポインセチアは「しょうじょうぼく(猩々木)」で引くこともできます。
Googleレンズのようには使えません
Googleレンズなどの検索ツールは、知らない植物をカメラで撮影すると、候補の植物が出てきますので、被写体がどのような植物であるかを調べることができます。
一方で、牧野 新日本植物図鑑は 植物の名を知ったうえで調べる書物ですので、Googleレンズのような目的でお使いになるのは不向きです。
しかしながら、工夫をすれば 牧野 新日本植物図鑑を楽しむことが出来ますので、次の章にてご紹介いたします。
楽しめる!「牧野 新日本植物図鑑」のおすすめの見方
外国名の植物を調べたいとき
牧野 新植物図鑑は、基本 日本名で探しますが、外国名の植物を調べることもできます。
今回は、「アーティーチョーク」を例に、図鑑の見方をご紹介いたします。
アーティーチョークを調べる方法
インターネットやハーブの本などで、アーティーチョークの日本名を調べます。
アーティーチョークの日本名は、「ちょうせんあざみ(朝鮮薊)」です。
そして、牧野 新植物図鑑の日本名索引で、「ちょうせんあざみ」を引きます。
ちょうせんあざみは 図鑑675ページに掲載されています。
牧野氏の、芸術的ともいえる 挿絵と、チョウセンアザミについて、詳細に記載されています。
残念ながら挿絵に色は付いていませんが、しばし見入ってしまうほど 精密な絵です。
なまえが分からない植物を調べる方法
植物の名が分からない場合の調べ方を、ご紹介いたします。
上の画像は、親戚の家の庭に咲いていた赤い花です。
球根系の植物に見えますね。
この花をGoogleレンズで調べてみました。
Googleレンズで赤い花を調べてみたところ、「ヒメヒオウギズイセン」という検索結果が出ました。
親戚の家の庭の赤い花と似ていますので、牧野 新植物図鑑の日本名索引で、ヒメヒオオギズイセンを引いてみます。
ヒメヒオオギズイセンがありました。
871ページを開いてみます。
親戚の家の庭に咲いている赤い花は、ヒメヒオオギズイセンで間違いないようです。
ヒメヒオオギズイセン(姫檜扇水仙)はアヤメ科で、南アフリカのインド洋に面した地方が原産です。
1868~1912年の明治年間に日本に輸入されましたが、現在(図鑑発行当時)は稀になっているそうです。
このように、文明の利器を利用しながら、牧野 新植物図鑑を楽しむこともできます。
まとめ
牧野日本植物図鑑を、ご紹介いたしました。
この図鑑は、牧野氏の魂が込められている一冊です。
牧野氏の挿絵を眺めているだけでも楽しめる図鑑ですので、お家に一冊いかがでしょうか。
[紹介本]牧野新日本植物図鑑(北陸館)